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2020/06/17

あけぼのインタビューvol.1

一菁陶園(いっせいとうえん) 代表 八木孝幸(やぎたかゆき)さん(前編)

「日本のものづくり応援メディア あけぼの」初のインタビューです。お話をしてくれるのは、常滑焼の窯元の3代目である八木孝幸さん。陶芸への思いや、海外でのお仕事などについて伺いました。

―陶芸を始めたきっかけを教えてください

小さいころから陶芸の粘土が遊び道具でした。おもちゃを買ってもらう代わりに、粘土の切れ端で人形やコップを作っていました。

高校、大学は一般の学科に通い、大学時代は3か月の語学留学で3回イギリスを訪れています。当時は卒業後にサラリーマンになろうと思っていましたが、そのころ父親が倒れてしまったので家の仕事をするために、卒業後スペインのバルセロナで陶芸を学びました。朝から語学学校に通い、夕方から陶芸を学ぶ生活を半年間続けたんです。

帰国後は父の仕事を引き継ぎましたが、型に泥を流して同じ製品を作り続ける工業的な仕事よりも、自分自身で創作する仕事をしたいと思い今の形になっています。大学卒業後3、4年位して今のお店を開きました。父から技術を引き継ぐことができなかったので、ノートを見て試行錯誤しながらの日々で、最初のスタートは軌道に乗るまでが大変でした。

―「一菁陶園」としての作品の特徴はどんなところですか?

昭和10年頃から祖父が「跤趾焼(こうちやき)製陶所」という名前で仕事をはじめ、戦後に今の「一菁陶園」という名前に改名しました。

その歴史の中で、おじいさんの釉薬(うわぐすり)のレシピを引き継いで作っているものもありますし、スペインに留学していたころのインスピレーションが具体化されたシリーズもあります。ギャラリーを木工作業で自分で作る中で、木目をテーマに屋久杉をイメージして作ったものもあり、歴史を受け継いできたものと、自分の経験から生まれたオリジナルのもの両方を大切にしています。

山などの自然や旬の食材に魅力を感じ、その中からインスピレーションを得ることもあります。

―こだわりや、作品作りで大切にしていることはありますか?

「嫌いなことはやらない」ということでしょうか。自分らしいストーリーがある、自分軸のものづくりを大切にしています。今の売れ筋を探って今風に作品を作ることはあまりしません。他人軸でのものづくりはつまづいたときに終わってしまうけれど、自分軸での自分の好きを守っていくとつまづいたり方向が変わったりしていっても最終的に目的地にたどり着くことができると思っています。

―たくさんのシリーズがありますが、特に人気のものなどはあるんでしょうか?

自分がその時に興味のあるものを研究や改良していくので、そのシリーズはお客様からの反応もよく感じます。作者の熱意は伝わりやすいですね。作ることも販売も自分でするので、いいものを作るだけではなく発信力も身につけていきたいと思います。

―「発信力」ということに関して、どんなことに取り組んでいますか?

コロナの影響でお店を臨時休業する際に、そのお知らせをお客さんに届けることができませんでした。その経験から、今は「Instagram」と「Lineでのスタンプカード」を導入しています。

Instagramでは、一方的に発信するだけではなく、お客さんとのコミュニケーションツールとして捉えています。芳名帳のようなイメージです。スタンプカードはポイントを貯めてもらえることはもちろん、今後の休業の際には一斉にお知らせすることができるようになっています。

コロナは嫌なことばかりですが、自分が営業をする上でのウィークポイントが分かったので、改善しようと思っています。

八木孝幸

一菁陶園の三代目。幼少時から土に親しみ、大学卒業後にスペインに留学し陶芸を学ぶ。常滑の焼き物散歩道にギャラリーを構えながら、語学力を活かし台湾やスイスなどでも作品展やデモンストレーションを行っている。

一菁陶園(いっせいとうえん) 代表 八木孝幸(やぎたかゆき)さん(後編)
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